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2005.11.11

800発の銃弾

 講義の帰りに、渋谷で「マカロニ・ウェスタン 800発の銃弾」という映画を観て来ました。そう、正式タイトルは「マカロニ・ウェスタン」まで含むのです。
 21世紀の今になってマカロニ・ウェスタンの新作が、しかも現代劇として現れるなんて誰が予想したでしょうか?
 かつては西部劇の撮影所として栄華を極めた(といっても大した事ない)、スペインはアルメリア地方の「テキサス・ハリウッド」。だが、今はすっかり寂れた貧乏観光地として、マカロニ・ウェスタンに出演していたスタントマンたちがぽつりぽつり訪れる観光客相手のショーで糊口を凌いでいた。ある日、座長のフリアンの元に死んだ息子の忘れ形見カルロスが尋ねてきて……という筋立てから、クライマックスは「テキサス・ハリウッド」の存続をかけて警官隊との一大ガンファイト。
 モチーフも秀逸ですが、この「自分たちが切り拓いた町を外敵から守るために、砦にこもって戦う」というシチュエーションがちゃんと西部劇なのですよ。
 ただ「フィクションによって人生を形作ってきた人間が、己のアイデンティティをかけて現実の中で戦う」という話でありながら「サボテン・ブラザース」や「ギャラクシー・クエスト」のような明るいハッピーエンドにならないのは、この物語を覆っているのは「個人の不遇」ではなく「社会の構造的疲弊」だからなのですよね。
 フリアンたちはもうやり直しがきく年齢じゃないし、過去の栄光さえ虚飾まみれだし、国は不況だし、田舎は過疎だし……。裕福に育っているカルロスが最初、モラル欠落した悪ガキで「イスラムテロリストごっこ」で遊んでいるあたり、家庭の崩壊とそれに伴うモラルの崩壊、子供たちに提示する指針の欠如という病根の表れなのですよね。
 中盤のどんちゃん騒ぎ~後半のガンアクションの爽快さというのは、何と言うか「破滅に向かって“駆け上る”」かのような爽快感なのです。にも関わらず、最後の最後にフリアンが残した「真実」がカルロスに伝わり、恐らくは彼を成長させたであろうのが救いですね。
 一見バカで無茶でありながら、実に味わい深い映画でした。

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